朝は5時に目を覚ます。
なんかよく眠れなかった気がする。
しばらくテントの中でぼんやりする。
朝飯に、袋ラーメンを食べる。札幌一番塩ラーメン。
おすすめ。
パッキングを済ませ、スコットに挨拶しようと彼のテントの付近に行くが、正確な場所が分からない。仕方ないから、ラインで別れを告げる。
朝のまだ冷たく濃い空気の中を、米子を目指して出発。
畑の中を走る。
左手に大山が見える。
国道9号線に出て、ガソリンスタンドで、ガソリンを入れる。
スタンドの人に、ここから米子に行くには、高速に入ったがいいか、このまま国道9号線がいいか尋ねると、このま国道9号線でいいとのこと。
「鳥取の人間はだれも高速使わないよ。どっちも同じぐらいのスピードで走れるから」ということだった。
昨日の経験からも鳥取は車が少ない、なるほど。納得である。
ということで、国道9号線を米子目指して走る。
大山が左手に見える。
雄々しい山容である。
いつかチャンスがあれば登ってみたい。
しかも名前が大山だし。
空はどんより曇って、雲が厚い。
寒くはないが、今日は晴れ間は期待できないのかも。
米子は、想像以上に大きな街だった。
安西水丸が言っていたとおり、お城は草ぼうぼうではなく、きれいに整備されていた。
天守からは米子の町と中海が一望できた。
きもちのよい城だ。観光客も多い。
米子から、安来市の月山富田城を目指す。
途中で雨がパラパラ降りだす。
あー、もたないか。これまでか。仕方ない。
シルバーシートを出し、荷物を包む。防水性は高いはずだが、包みにくい。大きすぎた。
なんとか包み走り出す。
しかし、月山富田城についたころは、雨は止んだ。
まだ、本降りにはならなそうではある。
ただ、困ったことに、月山富田城は山城だった。しかも想像以上に規模が大きく、本丸は遥か遠く、ずっと高い頂上にある。
本丸目指して歩く人が、豆粒のように見える。あそこを上るのか。
エンジニアブーツで。とほほである。
とほほであるが仕方ない。
汗びっしょりになってのぼる。
それにしてもよくぞ、こんなところに城を作ったものだ。
ここでは、有名な戦が行われている。
ここでは多くの命が失われたはずである。
もう何百年も前に。
城廻りをすると、どの城でも思う。
城の多くは、戦いのための施設であり、ずっと昔に、城をかけ、多くの人が命を懸けて戦ったのだと。
また、ある本では、戦いのための施設だから美しいのだと。石垣のみであってもと書いてあった。その通りだなとも思う。
本丸からは、ずっと遠くが見渡せた。
毛利氏はどこから尼子氏を攻めたのだろう。
また、ハアハア言いながら登った道を下り、駐車場に戻る。テントでイノシシの串焼きを売っていたので購入。
300円。中国地方のイノシシもおいしい。
また、雨が降り出した。
当初は、米子まで戻り、境港まで行こうかとも思っていたが、雨も降りだしてきたことだし、境港はパスして、松江を目指すことにする。
雨が次第に強くなり、もうカッパを着なきゃと思ったところに、スーパーがあって、ちょうど、駐輪場に屋根があるのが見えた。
そこで、着替えることにする。
時間もそろそろ昼で、スーパーで弁当を買う。特に、松江らしさはない普通のから揚げ弁当。
弁当を食べ終わって、カッパを着ていると、ばあちゃんがきて、大きなオートバイね。どこから来たの?熊本から。うぁ遠くから。雨も降ってきたら気を付けてねと言ってくれた。
なんとなく死んだばあちゃんを思い出す。。
走り出すと雨はすぐに止んだ。
ちぇっである。
だいたいこうしたもんだ。
雨も降らないのに完全武装したカッパバイカーが、国道9号線を爆走する。
松江市内に入ってもまだ雨は降らない。
松江城の看板が見えるが、なんか松江城に行きたくない。
すごく貴重なお城ではあるのだが、なんか気が進まない。もう一度行ったことがあるからか。けど、なんとなく行きたくない。
ということで、インスピレーションに従い行かないことに。こういうことができるのが一人旅の良さだ。
全部自分次第。成功も失敗も。
じゃあせっかくだから、代わりにべた踏み坂でも行ってみるかと調べてみると、なんと境港の方にあるらしい。
境港に行っておけば、行けたのだが、もう今更行く気はない。
まあ、これも仕方ない。
次の目的地というか、今回の旅の最後の観光地、出雲大社を目指す。
このころになると晴れ間が見えはじめる。
宍道湖の脇のコンビニでカッパを脱ぐ。
宍道湖を眺めながら、西へ向かう。
出雲大社は、30年前に来たはずだが、全然記憶にない。
すごい人出だ。
参道で4年ぶりという“餅投げ”をしていた。すごい人だかりだったが、偶然自分の方に投げてくれ、一つとることができた。ビニール袋に小さな餅が2つ入っていた。
お参りした。
縁結びにご利益があるとのことで、三人息子に良縁がありますようにと祈る。
お賽銭はポケットにあった20円。
これで叶うかな。
その後、散々迷った挙句、島根県立出雲歴史博物館に入る。伊弉諾と伊弉冉の映画を見ながら寝てしまう。
見たかったのは、最近見つかったという出雲大社の神殿を支えていた柱と当時の神殿の模型である。神殿の柱はすごく大きかったが、平安時代の神殿の高さには諸説あるようだ。高さ48mとはびっくりだ。
出雲を出て、浜田市を目指す。穏やかな日本海を右手に眺めながら、軽快に進む。
この度も最終宿泊地に近づいている。
浜田に入り、このあたりかというところで、バイクを路肩に止め、スマホで調べていると、散歩中の老夫婦が話しかけてきた。
おばあちゃんの方が、「大きなオートバイねぇ。キャンプするの?」と話しかけてきた。「この近くに、石見海浜公園ってところがあるらしく、そこに泊まろうと思っている」というと、「あっ、それなら、この先、もうすぐよ」と教えてくれた。
じいちゃんは、「水族館もある」と教えてくれた。
このあたりは、いいところですねと話した。
石見海浜公園はすぐ近くで、敷地に入ると無料キャンプ場も必ず受付をという看板が出ており、管理棟へ行き、受付をする。
受付の人がすごく丁寧で、気持ちよい対応してもらった。
こっちは無料キャンプ場を使わせてもらうだけなのに。恐縮である。
説明してもらった駐車場にバイクを止め、まずサイトを確認する。
サイトまでは5分ほど歩くのが難点だが、サイトは広く、ほとんど人がいない。
もうゴールデンウィーク終盤だからか、明日は100%雨だからか?まあ、いい。
明日の雨も考慮し、少し遠いが、炊事棟の横の芝生にテントを張ることにする。
大学生らしい男女グループが、近くでバーベキューをしているが、彼らの装備から宿泊ではなさそうである。
夜には撤収するのだろう。
バイクに戻り、2往復して荷物を運び込む。
テントサイトは静かで、夕暮れの日本海が見える。
風が強い。念入りにペグを打つ。
夕食を買いに近くのスーパーに行く。
「石見特産さば寿司」とあり、半額シールが貼ってあったので、それとビールを購入。
日本海に沈む夕日を見ながら、さば寿司を食べる。
テントの中で、しばらく本を読むが、いつの間にか寝てしまう。
夜中、テントを揺らす風の音で何度か目を覚ます。