5:00に目を覚ます。
とても静かである。みんな寝ているのだろう。
テントを開ける。朝焼けの空が見える。
昨日、スーパーで買っておいたサンドイッチとコーヒーで朝食とする。
パッキングを済ませ、6:00出発
橋を渡ったすぐのところのコンビニでトイレ。
トイレのお礼に缶コーヒーを購入。
この辺りは地名が「溝口」というらしい。
鬼ノ城を目指す。
この鬼ノ城も山城で、狭い山道を頂上目指し登っていく。
緑が濃い。
栗の花の匂いする。
藤の花があざやかだ。
ほとんど頂上というところに駐車場があり、ここからは徒歩。
さらに20分ほど歩き、大きな楼門にでる。
眼下に総社の街並みが広がり、その向こうに瀬戸内の海が見える。
なぜ、こんな山の頂上に、こんな大きな城を築いたのだろうか。
なぜ、こんな大きな城を築く必要がったのだろうか。
こんなところに誰が攻めてくるというのだろう。
だれもいない楼門の下で、そんなことを考える。
ここからの眺めはなんとなく、当時のことをリアルに感じる。
山をおり、高梁市を目指す。
高梁川と並走するルートで高梁市を目指す。
国道の横を汽車が走り、なんとなく球磨川と国道219号線を思い出す。
高梁市は山間の小さな町だった。
ずいぶん狭い土地のように思える。
まだ8:00過ぎで、備中松山城が開城するのが9:00とあるので、その前に高梁市をバイクで巡る。
安西水丸の「小さな城下町」に高梁市のことが書かれている。
ああ、これがそうかという感じでみることができる。
頼久寺の前で出た。
安西水丸の「小さな城下町」によると、小堀遠州の作庭した庭で有名なところだ。
備中松山城の前に見ておくかと入るが、ここも9:00からとのことで、見学できず。
ならばということで、まだ早いかもしれないが備中松山城にいくことに。
くねくねした山道をバイクで走る。
吉備国際大学という大学の脇を走る。学生の姿は見えない。
山を登っていくと石垣で組まれた段々の水田が現れた。
どの水田もすごく小さく、田植え前ではあるが、水をたたえ、朝日にキラキラ輝いている。
緑の山々の鮮やかさと相まって、大変美しい。
ずいぶん上ったところに、駐車場と土産物屋があった。
係員がいて、バイクはここに止めて、ここからはバスで上の駐車場まで行ってもらうと言った。往復でバス代が500円とのこと。
歩いても行けるが、片道45分ということで、仕方なくバスに乗る。うまい商売だ。
革ジャン、ブーツ野郎に選択肢はない。
10分ほどバスで山道を進むと小さな駐車場についた。ここから今度は歩きで、さらに
20分とのこと。
また、革ジャン、エンジニアブーツで山登りだ。
はあはあ言いながら、山道を登っていくと、突如大きな石垣が現れる。
ようやく備中松山城に着いた。つつじの生け垣が見事だ。
三の丸からは、眼下には高梁の街並みがよく見えた。
二の丸で、ようやく天守が見えた。小さな天守だが、非常にバランスが良いというか、美しい。
小さいころから図鑑で見ていたあのお城だ。感慨深い。
なぜか植木のじいちゃん家でお城図鑑を眺めていた日曜の午後を思い出す。
日本で一番標高の高いところにある現存城とのことだが、内部もとても小さい。
小さいが展示物を読むと、非常に多くの人の手と思いがあって、現存していることがうかがえる。
歴史とはそういうことかとつくづく思う。
普段は公開していない二重櫓も公開してあり、そちらも見学する。
あの有名な猫が、けだるそうに城門の脇で寝ている。
その周りに観光客が群がり写真を撮っている。
決して撮るもんか!
また歩いてバスのところまで戻り、バスで駐車場まで下る。
驚いたことに、さっきはほとんど人のいなかったバス亭に、バスの乗車待ちの観光客が長い列を作っている。
さっきの係員にすごい人ですねと話しかえると、このGWで1万人は来ますねということだった。
こんな山の中にすごい集客力だ。
人吉は何をしてるんだと思ってしまう。
高梁の町に下り、頼久寺に行く。
入り口でブーツを脱ぐ。
城や寺巡りでは、このブーツを脱いだり履いたりが結構ストレスだったりする。
仕方ないけど。
お寺の中に入り、縁側を進むと立派な庭が見えた。
これが小堀遠州の作庭した庭か。
小堀遠州のことは何も知らないけど、安西水丸の本に、すごいらしいことが書いてあった。安西水丸はあまり評価していないようだが。
お寺の縁側に座り、庭を見ながら説明の音声を聞く。
なんでも、この庭は蓬莱をイメージしてあるらしく、
つづじの生け垣がうねうねは波を表しているのだということで、石を組み合わせ、島を表現したり、カメを表現しているとのことだ。
そういわれるとそう見える。
確かに庭を眺めていると、気分が落ち着いてくるから不思議だ。
もっとゆっくりしたかったが、先はまだ遠く、頼久寺の前の武家屋敷を覗いて、高梁の町を出る。
ちなみに武家屋敷は、男はつらいよにも登場したらしく、ひろしの実家という設定らしい。
良く晴れた午前中の青空の下、気持ちよい風に吹かれながら、高梁川の横をさらに北上する。
緑の山々が美しい。
何色もの緑が山を彩る。
栗の花の匂いが漂い、濃い緑に藤の紫がよく映える。
季節は5月。青空の中国山地。
津山市は大きな街だった。ワークマンがあったので、手袋を購入する。
あまりいいのはなかった。とりあえず、溶接用のグレーのブタ皮手袋を購入。
ゴワゴワする。
津山城は町の中央あたりの小高い丘に建てられた平城だ。建造物はほとんど残っていないが、石垣はすごく立派で、大きい。規模的にかなり大きなお城だったのだろう。
天守跡に上り、津山の町を眺める。盆地である。お城はすごい人出。
吉良さんからラインが入る。
もう、伊勢にいるようだ。
不思議な感じだ。
互いにソロツーリングだが、なにか一緒に旅しているみたい。
君は東に、僕は西に。
そんな感じ。
この津山での失敗は、無料のバイク駐車場があったのに、有料の車用の駐車場にバイクを止めてしまったこと。600円。残念。
町を抜け、田舎道にでる。
田舎道を、ひたすら鳥取を目指す。
途中の小さなスーパーに入り、弁当を購入。
クレジットカード払い不可とのこと。
駐車場の木陰で食べる。
普通の弁当。別に津山らしさも鳥取っぽさもない。
峠を下ると鳥取だった。
鳥取に入って気付いたのは、車がすごく少ないということ、そしてほとんどの信号が黄色点滅ということだ。
黄色点滅で何の支障もないとは、なんとも素敵だ。気持ちいいスピードで快適に走り、あっという間に鳥取市内に入る。
市内はさすがに、黄色点滅でもなく、車も多かったが、気持ちよく流れ、鳥取城に到着。
安西水丸の本には何にもないと書いてあったが、なかなかどうして。立派な石垣である。天守等はなく、石垣のみだが、石垣の上から鳥取の低い街を眺めるものはとても気持ちがいい。
ずいぶん暑い。ライダースを脱ぎ、Tシャツ1枚で木陰に入り、町を眺めながら、しばらくぼんやりする。
城の下の迎賓館を眺め、駅前の鳥取民芸博物館に行く。
安西水丸の本に出てきた。吉田しょうやの作った博物館だ。
博物館と言っても非常にこじんまりとし、小さい。受付に小さなお姉さんが静かに座っていた。
また、ここでもブーツを脱がなきゃならない。
民芸とはなんだろう。よくわからないが、なんとなく惹かれる。
有名な柳宗悦やバーナードショウの作品を見るが、好きか嫌いかしかわからない。
民芸とは気に入ったものを大切に使う、そういうことではないのかな。
隣の「たくみ工芸」で、目についた小皿を一枚購入。980円
使い道は特になさそうだが、絵柄がいい。
旅の記念として。
まだ、陽は高い。青島キャンプ場は当日宿泊はダメとことだったから、一気に倉吉市の大池野営場を目指すことにする。
鳥取砂丘も遠くないのだが、なんか気分が乗らない。なんとなく行きたくない。そういう時は、そのインスピレーションに従うべきだ。
パスである。
これがソロのよいところ。
自分だけの判断でよい。だれにも遠慮することも忖度することもない。
これを自由というじゃないのかな。
そういうことで、無料高速に乗り、一気に倉吉市へ。海沿いで風が強い。
大きな風力発電のプロペラがいくつも立っている。
日本海が、傾き始めた太陽を受け、静かにキラキラ光っている。
倉吉市に入ったころにはもうすっかり夕暮れになった。
通りにあったコンビニで夕食を購入。また、焼きそばとおにぎり、ビールだ。
大池野営場は、町からずいぶん離れた畑の中の大きなため池のほとりの小さなキャンプ場だった。
小さなキャンプ場だが、キャンパーは多く、テントでびっしりである。
大きなファミリーテントの隙間に、テントを立てていると、一人の外人が話しかけてきた。
自分もハーレーに乗っていると英語と片言の日本語のちゃんぽんで話した。
ロードキングの1800CCということだ。
奥さんが日本人で、今回は神戸の娘さんに会いに行くところいうことで、車できたということだった。昨日、今日とキャンプだが、明日は神戸だからホテルね、ということだった。
彼はスコットと名乗った。そして、なんと熊本在住だった。水前寺に住んでいるという。ビールを飲みながら、しばらく話す。
英会話教室の先生で、バンクーバー出身ということで、じゃあ、ブライアン・アダムスだねというと、彼は自分の父親の実家の隣に住んでいたということだった。互いに写真をとり、ラインを交換する。
何か、今回の旅はハーレー乗りとよく意気投合する。
吉良さんからもラインが入る。
ため池にかかる月がとてもきれいな夜だ。
夜中、隣のファミリーテントはどうやら中国人家族のようだったが、小さな子供が何度も夜泣きをして、そのたびに母親が大声で怒鳴った。
また、もう一方のテントでは、おっさんなのだろう、すごい鼾をかいている。
子供の泣き声よりも鼾が気になる。
仕方ない。アウトドアブームなのだ。
夜は賑やかに更けていく。