僕の旅はまだまだ続く

ハーレーを中心とした旅の記録

2019_四国旅3日目

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【今日のルート】東かがわ市から高知市



5月2日(木)

朝6時に目を覚ます。夜中雨は降らなかったらしいが、テントにはびっしり朝露がついている。
薄い空に、ぼんやりかすむ朝日が、今日一日の快晴を予感させる。歯磨きがてら、浜辺に行く。
海はおだやかで、風もない。さあ、今日はどこまで行こう。

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朝の田ノ浦キャンプ場 ふかふかの芝生で寝心地最高

荷物をテントから出し、バッグごとごみ回収用のビニール袋に詰める。もう今日は雨は降らないとは思うが、それでもあえて連続使用3日目のビニール袋に詰める。盗難防止のために、荷物はわざと貧相かつ汚く見せるのだ。

あのビーパル的な、薪直火ファミリーキャンパーはこんな知恵はあるまい、フフフ。
一人ほくそ笑みながら、荷物をバイクに括りつける。

熊本ナンバーの古いオートバイはまだ、駐車場に止まったままだった。
オーナーもどこかにいるんだろうが、とうとう会うことはなかった。
まあ、いいや。
縁がなかったのだ。

まだぼんやりしているファミリーキャンパーのでっかいテントを尻目に、フンとつぶやき、キャンプ場を出発する。別にファミリーキャンパーに恨みはないが、なじめない何かは確かにある。

まあ、いい。
まずは、うどんで腹ごしらえだということで、昨日走った道を戻れば、確実にうどん屋はある。ただ、このまま徳島を目指してもあるかはどうかはわからない。
それに、徳島はうどんというよりラーメンだろう。

ここから、10kmも走ればもう徳島県だ。
一瞬迷ったが、ルートは南へ、徳島を目指すことに。バックするなんてありえない、と一人ごちたりしてみるが、うどん屋なんてどこにもなく、すぐに人家も途絶え、海沿いのまばゆいサンシャインロードになってしまった。

朝日を浴びて輝く海が、すきっ腹にしみる。

うどん三昧のはずの香川ロードでは、結局、上陸したときのかけうどんだけで終了となってしまった。
あれれ、である。
これもまあ、いい。旅とは予定外の出来事との遭遇だ。

国道11号線をひた走り、鳴門市を通過し、吉野川を渡る。四国を代表する川だけあって、さすがに大きい。

吉野川を越えると、もう徳島市の街中だ。
適当に国道を走っていれば、どこかで徳島城への案内板が出ているだろうと踏んだのだが、なかなか見つからない。
とりあえず、右折し、バス停の脇にバイクを停め、スマホで現在地を確認する。
後ろに見える山が眉山で、少し行き過ぎたようだ。

再度、国道11号線に戻るが、やはり案内板は見つからない。
適当なところで左折すると、徳島駅前に出た。
もう随分前だが、一度徳島駅の近くのホテルに泊まったことがあり、駅前の風景になんとなく見覚えがあった。

その時、少し観光をして眉山阿波踊り会館を見たことや有名なラーメン屋に行ったことは覚えているが、なぜかその時徳島城に行った記憶がない。

実は、日本100名城巡りをライフワークの一つとしており、現在42城制覇というところである。ただ、四国の城にはこれまでまったく縁がなく、ようやく昨年の香川出張の際、高松城丸亀城には行くことができた。

そこで、今回、まだオートバイで走ったことのなかった四国を走破することとともに、四国の100名城を制覇することも、大きな目的の一つなのである。

だから、徳島城を目指しているのだが、すぐ近くまで来ているはずなのに、なかなか徳島城に行きつくことができない。
そんな大きな街でもないのにである。

しかし、まあ観光がてら走っていると、そのうち出くわすだろうと、よくわからないまま、あちこち走っていると、突然、石垣が見えた。
ようやく発見、駅の裏手だった。
それにしても、案内板ももう少し、よろしく願いたい。

駐輪場にオートバイを停め、大手門跡を渡り、城内に入る。

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徳島城到着 大手門の前で

再建した本丸御殿だろうか、博物館として使われている建物があり、その前をジョギングしている人やウォーキングしている人がいたりする。
琴のグループだろう、木陰では年配の女性の一団がなにやら楽しそうに談笑している。それぞれがそれぞれの時間の過ごし方をしてて、みんなそれなりにハッピーそうな朝だ。

僕は僕で、わざわざ四国くんだりまで一人でやってきて、革ジャン、ブーツで城内を歩いている。僕も僕なりにハッピーだ。

本丸御殿を抜け、本丸のある城山に登る。
そんなたいした高さじゃないだろうと気楽に登り始めたが、なかなかタフな登り道で、汗びっしょりになりながらようやく山頂につく。

山頂には、隅の方に小さな祠があるだけで、あとはただの広場になっていた。小さなベンチが一つあり、その横に天守跡の由来を書いた掲示板が立っていた。

ベンチの前には、あまり若そうでなないが、男2人、女一人のグループがいて、なにやらやたら楽しそうに笑いあっている。
城山からは、眉山がすぐ横に見える。
城山から徳島の町を眺める。
低く緩やかに広がる街の向こうに、キラキラ輝く海が見えた。

9時30分。徳島城を出て、一路、室戸岬を目指し、国道55号を南下する。

朝の暖かい日差しを受け、オートバイのエンジン音を聞き、その鼓動を感じながら、あまり交通量の多くないバイバスの大きな2車線の道路を、自分の気持ちよいペースで走る。

左手には遠くキラキラ光る海が見え、右手には四国山脈の深い緑の山々が見える。
空は刷毛で一塗したような青空だ。

今日も誰に会う約束もない、どこまで行かなければならないということもない。
ずっと続く自由はないにしても、今は、あぁ自由だと叫びたくなるような48歳の春である。

阿南市に入る手前で、左手にファミリーマートを発見。少し先に、二俣に分かれた道の
案内板がでている。右手は阿南市のう回路のようだ。ルート確認がてら、少し休憩することに。

イートインでスマホを充電しながら、地図を見る。
ファミリーマートはイートインにコンセントがついているのがよい。
オートバイ一人旅にはファミリーマートがふさわしい。

阿南市へのう回路は、やはり30年前の地図には出てない。
コーヒーを購入するついでに、店員のおじさんに、「あの道、どっちに行ったが室戸には近いんですか」と尋ねると、
「右に曲がったほうが少しは近いかもしれないが、道がくねくねしていてね。お兄さん、バイクでしょ。私ならこのまま、まっすぐ進むね。この道の方が広くて気持ちいいと思うけどね」と教えてくれた。

なるほど、では、まっすぐ進むことにしよう。

他に客もいなかったからだろう、店員のおじさんは、店の前まで出て、見送ってくれた。
こんなことがあるだけで、僕は徳島県が、阿南市が好きになるのだ。

オートバイで通りながら眺める阿南市は、どこにでもある地方都市のように見える。
道沿いにはニトリがあり、マクドナルドがあり、シマムラがある。
この旅の中でも同じような街をいくつも通り過ぎた。
日本中の町がどんどん同じ顔になっていくようだ。

阿南市を抜けると、国道55号線は、しばらく山の中を走ったが、海陽町あたりから海沿いを走るようになった。

スッキリとした青空の下、右手に広がる真っ青な海を見ながら、車の少ない道をひたすら気持ちよく走る。
通りには町もなく、人家もない。ひたすら海と道だけがあるだけである。いい気分。

 

このあたりから、そんな道路の狭い歩道を歩くお遍路さんの姿をよく見るようになった。
彼らはどこからきて、どこへ向かっているのだろう。
この近くに四国八十八か所の何番かの巡礼寺があるのだろう。
強い南国の日差しを受け、青い空と海の中を白装束に菅笠のお遍路さんの姿は、異質のような、同化しているような不思議な存在に思えた。

 彼らの笠には「同行二人」と墨書きがある。
後で知ったことだが、弘法大師と二人で修業をしているという意味らしい。
ここは四国、巡礼の道なのだと改めて感じる。

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南四国の青い海と白装束のお遍路さん

さらに、海沿いのまっすぐな国道11号線を室戸岬を目指して走る。
青い空と青い海、白い雲と白い道。対向車は少ない。
自分のバイクの排気音を聞きながら走る。
日差しはチクチクするくらい強く暑い。

室戸岬に近づくにしたがい、観光バスや歩道を歩く観光客の姿が増えてくる。
国道55号線があんまりのんびりしていたので安心していたが、ゴールデンウィークだし、有名な観光地だし、やはりすごく混雑してるんだろうなと少しビビる。

歩道の脇の階段を上り、山の方に登っている観光客の一団がいる。
エンジニアブーツでたくさん歩くのは嫌だな、どうしようと思いながら、カーブを曲がると、山手に小さな観光案内所があって、駐車場に観光バスが何台も停まっている

その脇には何台かバイクが停まっている。
どうやらその観光案内所の真ん前が室戸岬の突端ようだ。
観光バスの横にバイクを停める。
ヘルメットを脱ぎ、革ジャンのファスナーを下げる。ふうっと力が抜ける。
ようやくここまで来たかと思う。

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室戸岬

今、四国全図でいえば、右下のあの突端にいるのだ。
目の前には真っ青な海がある。
岩場に波が打ち付けられ、白いしぶきが海岸に上っている。

他の観光客に交じり、海岸に降りる。白っぽい砂の海岸が少し続き、その先には大きな石がごろごろしている。どの石も黒く、丸っこい。波に洗われてここまで来たのだろう。サンゴのかけらもたくさんある。やはりどれも丸い。

ああ、室戸岬だ。
岩場に座り、海を眺めぼんやりする。
目を閉じる。
顔に南四国の太陽の熱を感じる。

ここまではこれたな。

さあ、これから今日はどこまで行こう。
室戸岬の浜辺に座ったまま地図を見る。
まだ昼前だ。このペースなら高知市まで行けるかも。

スマホで、「高知市、無料、キャンプ場」で検索すると、種﨑千松公園キャンプ場というのが出てきた。

坂本龍馬の像がある桂浜の川向うにあるらしい。評価欄を見ると、近くを大きな幹線道路が走っていて夜中ずっとうるさいとか、ヤンキーが来るとか、目の前がラブホテルなど、あまりいい評価はついていないが、テントが張れればなんでもいい。

ここで泊できれば、夕方まで高知市を巡れる。
よし、今夜はここを目指そう。

駐車場に戻り、革ジャンのジッパーを引っ張り上げ、バイクにまたがる。
走り出してすぐ、右手の道路わきの高台に中岡慎太郎の像があった。結構大きい。

ネットでは、高知市坂本龍馬室戸岬中岡慎太郎土佐湾をはさんで互いに向かい合って建っているらしいという記事を読んだことがあったが、実際は中岡慎太郎は太平洋に向かって建っていた。
そこまでロマンティックな話ではないようだ。

そのまま岬を回り、土佐湾に出る。土佐湾の陸地から大きく湾曲している海岸線が、はっきりわかる。海岸線に沿って走る国道11号線はまっすぐで、パームツリーの街路樹が並び、真っ青な海と空の組み合わせで、南国感がすごい。

5月の柔らかな熱を帯びた風をジェットヘルの顔に感じ、すこしニヤケながら、ひたすら気持ちよく、バイクを走らせる。

クジラのオブジェが町のいたるところに見えた。
このあたりは捕鯨が盛んなんだろう。

途中、大きな立体駐車場のような3~4階建てぐらいの鉄骨むき出しの建物がいくつも見えた。
なんだろう、建設途中の倉庫か立体駐車場かななんて思いながら、通り過ぎていたが、途中ふと気づいた。

ここは四国で、高知で、南海トラフなのだ。海抜もほほ0メートル地帯だろう。
あれは津波発生の際の、緊急避難のための建物なのだ。
そう思うとぞっとした。
熊本も地震で大きな被害を受けたが、津波は来ていない。
南海トラフ地震はやはりどこか遠くの話だった。
その現実が、その恐ろしさが目の前に具体的な対策としてあるのだ。

 路肩にバイクを停め、しばらくその建物を眺めた。
ここに多くの人が避難したとき、避難した人はどんな光景を見つめることになるのだろうか。
その日がこないことを祈るばかりだ。

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後日調べてみたら、「津波避難タワー」という名称のようだ

 途中、コンビニでおにぎりと水を2リットル買う。太陽がぎらぎらする駐車場でバイクにまたがったまま食べ、昼食とする。

南国市に入ると風景がぐっと街になってきた。
道も海沿いから離れ、バイパスのような大きな道になり、車の流れに乗って走る。
これまでを気持ちよく走ってきたせいか、なんか窮屈に感じる。
それに南国高知の午後の日差しは次第に暑さを増してきて、ジェットヘルで丸出しの顔面がチリチリ焼けるように暑い。

高知市に近づくにつれ、車はどんどん多くなり、ちょっとしたプチ渋滞みたいになった。結局、高知市内に入るまでずっと、その車の流れは続き、ようやく高知市内に入ったところで、コンビニに入り、店の外の日差しの下で、地図を確認する。

高知市で見ておきたいのは、高知城はりまや橋、桂浜である。
第一目標の高知城までそんな遠くないようだ。

高知市街は、道の真ん中を路面電車がのんびり走り、両脇には、あまり高さのないビルや店が軒を連ねている。路面電車があるせいか、なんとなく熊本の街と同じ雰囲気を感じる。
それにしても、日差しが強い。サングラス越しに眺める高知の街はすごく南国だ。

案内表示に従い、国道55号線から右手に入ると、高知県庁の正門前に出た。その裏の山に高知城天守閣が見えた。時計を見るともうすぐ3時というところ。

高知県庁の駐車場は休みの日には開放してあるようで、係の指示を受けながら、大阪ナンバーを付けたBMWのバイクが駐輪場に入っていく。
それに倣って、同じようにオートバイを進めると、係員が誘導棒を回しながら、駐輪場に入るよう案内してくれた。

この県庁は映画「県庁おもてなし課」で見た。
休みの日は駐車場を開放するとはいいなあ。無料のようだし。
熊本でもやればいいのにと思う。

オートバイを停め、県庁の横の堀端を歩き、正門からお城に入る。
観光客がたくさんいる。
その中をまた、革ジャン、ブーツで歩く。

お城全体が小高い山に建っており、天守はその山のてっぺんにある。結構な高さで石の階段が続いており、すぐ汗びっしょりになった。
たまらず革ジャンを脱ぎ、Tシャツ1枚になる。

二の丸から本丸に続く階段の脇に、高知名物「アイスクリン」の出店があった。
秋田の「ババヘラアイス」と同じ類のものらしい。
すごいおいしそうだったが、帰りに、帰りにと自分に言い聞かせ我慢する。

二の丸から天守を見上げる。
ずっと来たかったお城だ。

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二の丸から見上げる高知城天守

興奮する気持ちを抑えつつ、本丸への階段をゆっくり上がる。

眼下に高知の街が見える。
遠くに太平洋が見える。反対の方向には四国の山々が連なっているが、日差しのせいか白くかすんで見える。

本丸の門をくぐると、多くの観光客で本丸の庭はあふれかえっている。本丸は思ったより小さいんだなあというのが第一印象だ。連立式の天守和歌山城と同じだが、高知城が少し小さいかな。

しばらく並んで、チケットを購入し、天守内に入る。
大広間を眺める。あの奥の一段高いところに山内容堂が座ったのか。武市半平太もここ座ったのか、なんだか幕末を想像する。

自分の中で日本名城ナンバー1はやはり熊本城だが、高知城のような連立式天守も好みである。くねくねした迷路感、要塞感は心が躍る。

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天守閣最上階から本丸を眺める

帰りに、しばらく並んでアイスクリンを購入。3段重ねで、そろぞれフレーバーを変えるのが高知流のようだ。前の人に倣って、バニラ、ソーダ、チョコという組み合わせをチョイス。二の丸の日陰のベンチに座って食べる。冷たさと甘さで生き返る心地。

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高知名物 アイスクリン

食べ終わったころ、職場の同僚から電話。
休日、職場の同僚から電話。
不吉な予感。
トラブル発生?
至急帰ることに?
どきどきしながら電話に出ると、何のことはない、ただの行事の日程確認だった。
やれやれである。
旅は続行である。

次ははりまや橋だ。
地図でだいたいの方向を確認し、県庁を出発。
電車通りを走るが、すぐに自分がどこにいるのかわからなくなる。
案内板も見当たらない。

まだかな?見落としたかな?と思いながら信号待ちをしていると、横に停まったハイエースの助手席から工事作業員風のロン毛ひげの兄ちゃんが、
「かっこいいバイクやねぇ」と笑顔で声をかけてくれた。
どうみても年下だが、「どうも」と答えつつ、
はりまや橋はまだこの先でいいんですか?」と聞くと、
「あっ、はりまや橋はね、そこを左に折れたらすぐやっ」と、なんだがすごくうれしそうに教えてくれた。

信号が青になると、「じゃあ、楽しんでなぁ~」と言いながら、ハイエースは直進していった。教えてもらった通り、左折すると、兄ちゃんの言った通り、はりまや橋はすぐ傍に出た。

日本三大がっかり観光名所の一つに挙げられるはりまや橋だ。
想像してたよりも小さく、ビルとビルの間の小さな溝に架けられた小さな赤い太鼓橋だった。
ひとしきり案内板を読んで、橋を渡って、ゆっくり周りを眺め、もう一度渡った。

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はりまや橋

よし、期待してなかった分、期待通りだ。OK、満足。
もうすぐ5時。
相変わらず日差しはぎらぎらしており、まだ夕暮れという気配はない。

地図で桂浜を確認し、県道34号線を走り、桂浜を目指す。
市街からは少し離れるようだ。
渋滞まではいかないまでも、車の量が多い。
桂浜に近づくにつれどんどん多くなっていく。

みんな桂浜行きなんだろう。海沿いの黒潮ラインに出たところで、渋滞にはまった。
警察が交通規制をしている。どうやら駐車場の満車が原因で、この渋滞を作っているらしく、「駐車場が満車で入れません。一度この先にある・・・橋を渡って、・・・から入場してください」みたいなことを言われたが、よく聞き取れなかった。
ただ、前の車の流れについていくと、大きく縦に割れるカーブのように湾曲した橋に出た。瀬戸大橋という橋らしい。
片側一車線の橋の上で渋滞するというのもあんまり気持ちのいいものではない。
橋の初めから終わりまでびっしり車が連なっている。
結構高いところに橋が架かっているから眺めはいい。左手には浦戸湾の向こうに高知市の街が見え、夕日に光っている。
右手には砂浜の向こうに白く泡立つ土佐湾が見える。

渋滞した橋の上をタラタラ進むと、橋のたもとのラブホテルの前の松林の中にテントがチラチラみえた。
きっとあそこが種﨑千松公園キャンプ場に違いない。
ならば、桂浜行は後回しにして、まず寝床を確保することに。

種﨑千松公園キャンプ場は、橋のたもとにある松林の中にあり、結構広い。松林の向こうはすぐ海だ。トイレもあるし、炊事場もある。なかなか居心地がよさそうだ。
もうすでに、結構な数のライダーがテントを張っている。テントは張ってあるものの人のいる気配はない。バイクもないから、みんなどこかに出かけてるんだろう。

テントはどこに張ってもいいようだが、これが結構重要なのだ。
まず、ファミリーテントの近くは避けること。焚火をするし、うるさい。
つぎに大人数のグループライダーたちのテントの近くもさけること。多分遅くまで飲むし、おしゃべりが延々と続く。
トイレの近くもよくない。夜中ひとの気配を感じるし、怖い。
できることなら、ソロライダーのそばがいい。基本静かだ。チャリダーならもっといい。彼らはもっと静かで、疲れるのだろう、すぐ寝る。

そんなことを考慮し、テントを張る場所を松の木の下に決める。

隣は、やはりどこかに出かけているらしい。テントはモンベルのムーンライトだ。懐かしい。名作テントだ。これはそこそこ重いからチャリダーではまず使わない。だから多分オートバイのソロだと判断。
なかなか洞察が深いと自分をほめながら荷物をほどく。

テントは、朝朝露が付いたまま、ビニル袋に突っ込んだから、全体的に湿っていて、しかも熱をもっていて、それがすごく気持ち悪い。
テントを組み立て、ひっくり返してまずグランドシートを干す。フライシート、カッパは松の木にぶら下げて干す。

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今日の寝床、種﨑千松公園キャンプ場

革ジャンを脱ぎ、海岸に出てみる。
空が少しオレンジ色に染まり、夕暮れの涼しい風がやさしく吹いている。さっきまでの夕日のぎらぎらした熱はすっかりおさまっている。ベンチに座り、しばらく海を眺める。

家族のことを考える。
もう妻は仕事から帰ったかな。
夕飯を作っているころかな。
三男坊は部屋でギターを弾いているのかな。

しばらくぼんやりした後、ひっくり返したテントを戻し、荷物を放り込んで、桂浜に行くことにする。
まあ、オートバイでの夕方の散歩だ。荷物を下ろしたオートバイはバイクは心なしか、ハンドリングが軽い気がする。

なんだかすごくラフな気持ちでオートバイに乗る。橋の渋滞もすっかり解消されていた。気持ちいい夕暮れだ。

交通規制も解除されていて、警察官の姿もなかった。道を浜に向かって下り、桂浜駐車場にでる。駐車場はがらがらで、土産物屋にもあまりお客もいないようで、店の人が所在なさげに立っている。
ただ、浜辺に向かう観光客はまだ結構いるようで、彼らの後をついて階段を上ると、坂本龍馬像のところに出た。

結構大きい。室戸の中岡慎太郎像と同じくらいか。
確かに坂本龍馬は、土佐湾の方を向いている。たしかに室戸岬の方角かもしれない。

浜に降り、砂浜を歩く。
浜のずっと先の方に竜王宮の社が見える。

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桂浜

陽が暮れかかってきた。
これで社の上に月でも昇れば絵葉書の構図だ。
京極夏彦の巷説シリーズの船幽霊の舞台がここだったよなと思い出す。
波打ち際を歩き、海水に指先をつける。

しばらく海を眺めていると、まわりはすっかり薄暗くなった。
桂浜を出て、瀬戸大橋を渡り、キャンプ場を通過して、近くのコンビニに入り、スマホの電池式の充電器を購入。ずいぶん辛抱して使ったが、もう今日にでも電池が切れそうだ。

そして、さらにスーパーの鮮魚コーナーで半額になっていたカツオのたたきとミニ海鮮丼とビール少々とインスタントコーヒーを購入。

テントに戻り、やっぱりさすが本場のカツオは違うねぇと一人、ビールを飲みながらカツオのたたきを食べる。

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今日の夕食、高知の海三昧と思っていたら・・・

地元のスーパーで地元目線で、地元の食材を購入、ツウだね俺、と一人悦に入り、家族のファミリーラインに、今日の夕食の写真を送る。
すると、すぐにピコンと音が鳴った。妻からだった。
「なんでわざわざ高知で枕崎産のカツオなんか食べるの?バッカじゃない」という文面でだった。はぁ?と思ってパックのラベルシールを見ると、確かに鹿児島枕崎産と書いてあった。

ガーンである。

そうそうに寝袋に入り、野田知佑の放浪記を読む。

どこかでレゲエが聞こえてくる。きっと炊事場の近くに張ってあったでっかいスノーピークのファミリーだ。

なんと道徳心のないことよ。素人メが、フン!

 

【走行距離 260km】